レザーの研究は、素材の本質を知る旅に出ることから始まります。なめしから皮革の入念な選定、ヴェネチアレザーに輝くパティーヌからエキゾチックレザーの独特な光沢まで、そこには、時を経て伝統となる素材を生み出すという、同じ探究が浮かび上がります。美しさと精確さ、感動が織りなす物語のような素材です。
レザーの研究は、素材の本質を知る旅に出ることから始まります。なめしから皮革の入念な選定、ヴェネチアレザーに輝くパティーヌからエキゾチックレザーの独特な光沢まで、そこには、時を経て伝統となる素材を生み出すという、同じ探究が浮かび上がります。美しさと精確さ、感動が織りなす物語のような素材です。
繊細で腐敗しやすい未加工の素材を、高貴でなめらかな、耐久性のある素材へと変えること。それがなめしの技術であり、あらゆる皮革の歴史の礎となる工程のひとつです。この技術によって、食品産業の副産物である皮革が永続的な創造物へと生まれ変わるのです。
メゾンは、素材の本質的な特性を保つという一貫したこだわりのもと、幅広い皮革(カーフスキン、ゴートスキン、ラムスキン、エキゾチックレザーなど)を研究しています。川での水洗いからドラム、皮革を休ませ乾燥させるまで、厳格に管理された工程が続きます。忍耐によってのみ、皮革の柔軟性と耐久性を引き出すことができるのです。
また、ベルルッティはさまざまな色調のパティーヌを生み出す技術を開発しました。なめし職人との協力で、秘伝の製法による二重なめしを施したヴェネチアカーフレザーが誕生しました。
なめし工程の後、レザーの命運を決めるもうひとつの重要な段階が、選別です。マニファットゥーラ・ベルルッティに届いたレザーは、熟練の選別担当者の手に委ねられます。検査を行う専門家は、表面のわずかな凹凸、かすかな天然のキズ、微細なざらつきなど、どんな細部も見逃しません。工房に持ち込まれるのは天然皮革のみ。メゾンが究極の品質を追求していることの証しです。
ベルルッティは、長い時間をかけるという哲学に従い、最高級皮革のみを選定しています。年月を経て優雅な風合いを帯び、シューズ、ウェア、レザーグッズとなって独特の美しさを備えたレザーとなります。
パティーヌは、タルビーニオ・ベルルッティがショーウィンドウに展示された靴に月の満ち欠けが与える影響を観察したことから研究が始まりました。黒と茶色が主流であった硬直した靴の世界に色彩を取り入れることで常識を覆します。この技巧は、まるで錬金術を思わせる方法で実践されています。丹念に色を塗り重ねて、目指す色合いを作り出します。こうして、光に透けるような唯一無二の靴が誕生するのです。
カラリストは、指に巻いた綿布で円を描くように染料を塗り、極めて精確に皮革の細孔に顔料を染み込ませます。徐々に、雲のかかったようなベールとスモーキーな光沢が現れ、一点一点にまったく異なる、独特な深みが生まれます。
表現力豊かなパティーヌは、ベルルッティが誇る独自のシグネチャーになりました。厳格な職人技と詩情あふれる色彩が融合し、一足一足を生命力あふれる作品へと昇華します。
素材の力とパティーナが革に光の透明感を与える。Talbinio Berluti
1993年、ベルルッティの協力者であるイタリアのなめし職人が、メゾン独自のオリジナル素材となるヴェネチアレザーを開発しました。パティーヌの技巧を引き立てるために特別に考案されたものです。このフルグレイン カーフスキンは、独特の二重なめし工程を経て作られます。まず、鉱物なめしを行い、コラーゲン繊維を結合して皮革を安定させます。次に、根、樹皮、果実の混合物による植物なめしを行い、柔軟性と深みを与えます。
仕上げ剤・改質剤不使用のため透明感があり、自然なキメが際立ち、ネロからカカオ、ニュートロまで、極めて繊細なグラデーションを表現することができます。1枚の革から平均3足の靴しか製造できない、高度な製造工程と希少価値をもつ最高級レザーは、ベルルッティ独自の特別なシグネチャーです。
メゾンの豊かなワードローブには、気品あふれる多彩なレザーが使用されています。トスカーナ地方では、カーフスキンが伝統的な樽漬けの技法によって加工された「サドルソフト」になります。この技法は、皮革の奥深くまで色を浸透させ、柔軟性と深みを与えます。フランスの由緒ある皮なめし工場では、より洗練されたラムスキンが「セタ」となります。独特の高級感あふれる、絹のようになめらかで軽やかなレザーです。
これらの高級皮革に加え、大きな四角い斑(ふ)がレザーグッズに最適な「アリゲーター ミシシッピエンシス」や、繊細さが人気の「ポロサス」といったエキゾチックレザーも使用されています。エキゾチックレザーは色に対して強く反応するため、豊かな色調をパティーヌによって引き出すには、ベルルッティの熟練したカラリストの厳格かつ正確な技術が必要となります。